『威風凜々 烈士鐘崎三郎』の刊行(1)

鐘崎三郎顕彰会〔編集委員会〕編『威風凜々 烈士鐘崎三郎』(花乱社、令和3年5

月刊、44+268頁、定価(税込み)3300円)

 

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表紙

 

 鐘崎三郎(明治2年~27年、1869-1894)。普通には、遼東半島において刑死した日清戦争の悲劇の「英雄」。通訳官・軍事探偵「三崎」の一人として知られ、芝居、講談、紙芝居、小説等の主人公としても取り上げられ、知らぬ者なき「英雄」であった。
しかし、戦後永らく語られることはなかった。発端は、昭和45年(1970)の鐘崎三郎の銅像の再建・除幕式であった。母は、除幕式を行った高校生の娘に対して、三郎の名を「他言しないように」(47頁)と念を押した。半世紀をへて、娘は、母の思いを受けて、鐘崎三郎の全容の解明に乗り出した。
 三郎だけでなく、併せて父寛吾の足跡も追跡し、一つのファミリーヒストリーとして興味深い内容となっている。また三郎の中国での足跡を追って、日清貿易研究所や日清戦争の研究においても有意義な書となったと思う。さらに納戸鹿之助『烈士 鐘崎三郎』所収の諸史料を取り込み、増補しているので、史料集としても有意義である。